文章を壊していく
澤村伊智さんのアウターQを読みました。
主人公は弱小ウェブマガジンで記事を書いていく湾沢陸男。
なんだか優しそうだし、仕事上とはいえ落ち込んでる初対面の人を慰めたり、仕事も真面目にこなそうと奮闘する若者で好感が持てました。
井出さんというカメラマンと共に仕事をしたりするんですが、
この井出さんの喋り方がツボ。
「ちょっとアレをアレしてたんで」
「テレビのアレをアレしない?」
「でもせっかくアレなのに」
何言ってるかわかんないよ!笑
でも不思議と嫌な感じはなく、主人公の湾沢さんもこれってこういう意味なんだな、と解釈していってくれるので読んでいてストレスがない。即通訳してくれる人がいるって最高ですね。
井出さん、そんな不器用な性格で生きてきたら大変だろうけど、湾沢さんみたいな人がそばにいてくれて最高じゃないか、よかったなぁとほんわかしました。
この人がいてくれて本当に良かったね、あなたの人生はある意味守られ、素敵なものになっている、と「老人と海」を読んだ時みたいな気持ちになりました。
いつかそれの感想も書き留めたい。
不器用な人が生きやすく助けられている光景ってなんだかホッとします。
こうやって言葉をアレばっかりにして文章を壊していくのなんだかロックでいいです。
かといってそればかりは勿論推奨しないんですけど。
ほんわかで終わる話ではないけど、読みやすくて良かったです。
余談
表紙手前の一番大きく描かれたキャラが主人公だと思っていたら、違うよ、と人に教えて貰いました。
よく見れば、確かにカップ酒を持っている。
このキャラクターもしっかりした子で好きでした。
なんだか「ぼぎわんが、来る」の比嘉姉妹みたいにシリーズ物にできそうな雰囲気の作品でした。