本に殴られたい。

物理的ではなく。

海馬の尻尾

「海馬の尻尾」 

 

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主人公は恐怖という感情を持たない「反社会性パーソナリティ障害」である。

 

反社会性パーソナリティ障害とは?

 英語だとAntisocial Personality Disorder、ASPD。

人の感情を軽視し、暴力を振るいやすい傾向があるパーソナリティ障害。

 

 

 

主人公の及原はヤクザ。

強いが人に対する良心がなく、しかし恐怖を感じないからこそ

ここまで来れているんだろうと思わされるキャラクター。

 

このキャラクター、寂しい。

人に酷い事をしているのだが、読んでいると「でもいい人になれるよね?反省していける人に。

だって寂しいよ、こんなの」と思いながら読んでしまう。

 

子供の頃親から酷い虐待を受け、愛情も貰えず育った及原の事を思うと、

「そりゃ自衛の為にそう考えるしかない」と思ってしまう。

それに現在出世も危うい、いや、可能性がどんどん無い事に気づいていったり、

部下に舐められていくのである。

寂しい。

そんな寂しい状態の時に、及原は「いや、今は別に文句を言わなくてもいいかな、って思ってるだけだから言わないだけだし。こいつがもっと怒ってきたら嫌だからやめてるわけじゃないし」

みたいな事を思ってるシーンを読むと

ヒェェェとなる。

自分にもよくあるこの言い訳!

私別に独りが寂しいんじゃなくてひとりの時間を持ちたいだけだし、逆にね?

と自分に言い訳をしていく感じ。

 

 

 分かる!!

 

 

 

だから私は読んでる間ずっと応援していた。

読みながら他のキャラクターに「違うんです、本当はいい人になれるんです」と弁解をしながら読んでいた。

 

 治療をする為に行く病院で出会う、病気を患っている小さな女の子がまた可愛い。

その女の子が向けてくる強い無邪気さと、懐いてくる可愛らしさが及原の気持ちを変えていくのだ。

 

 

 読んでいて思った。

 人が人に向ける愛情を応援する事はすごく嬉しい。

応援する事が嬉しい。


理由を考えてみると、間接的に私も応援する事で愛情を向けているからだと思った。

 

愛情を向ける事自体が自分の幸せになりうるのだ、とこの本を読んで知った。